オフィシャルインタビュー<後編>
結成4ヶ月ながら『ROCK IN JAPAN 2022』で優勝したり、『LIVE the SPEEDSTAR』オーディションを勝ち抜いたり、結成2年半にして華々しい経歴を持つMaverick Mom。しかし、その実態はまだまだ謎に包まれている。
――果たして、Maverick Momとはどのようなバンドなのか。
アルバム『unknown』のリリースや自主企画『サード・ファンファーレ』の成功などを経て、活動が一区切りしたのをきっかけにインタビューを実施。約1万字になったメンバーの言葉を、全3回でお届けしていく。ラストとなる第3回では、新曲「イエローメッセンジャー」を紐解くと共に、12月に行われる自主企画への想いや今後の展望について語ってもらった。
TEXT=坂井 彩花
――先ほどONさんから「「これもできちゃうぞ」っていうのを見せていきたい」とお話がありましたが、「イエローメッセンジャー」も新しいMaverick Mom感がある1曲ですよね。
ON:たしかに「こういうのもできちゃうんだよ」っていうのは見せたいですね。直近の3曲があったからこそ、「イエローメッセンジャー」が引き立つだろうし。
タイゾー:新しい3曲から僕らを知ってくれた新規のファンは度肝を抜かれるやろうし、古参のファンにとっては「Maverick Momだ!」となる曲やと思う。ONワールド全開。
ON:「Transcend even God」で「今年のMaverick Momはこれだ!」と提示できたと思うので、「イエローメッセンジャー」で次のMaverick Momを見せることができたらなって。この曲に関しては、ギターが丸投げなんですよ。基本的なリフは考えましたけど、イントロに何も入っていない、コードとリズムだけの状態で武瑠に投げました。
武瑠:いつもならけっこうフィーリングでやっちゃうんですけど、今回はしっかりと仕組みを理解しながら進めていきました。やっぱりONのコードは特殊だからね。要望を聞きながら「こんな感じ?」とすり合わせていきました。
ON:ギターが入ったデモを聴いたときは、マジで「うわっ。さすがだな」って思いましたね。期待以上のものを出してくれた。「武瑠のフレーズ、マジか」みたいな感じで、けっこう印象に残ってる。
タイゾー:車のなかで、武瑠のギターがついた状態のデモを初めて聴いたときは、思わず声をあげて叫んでしまったもんね。きっと外まで声が漏れ出てたと思う(笑)。もともとのデモだと「どんな曲になるんだろう」って全貌が見えてなかったけど、武瑠のギターが入ったことでまとまった。曲の雰囲気が180度変わったんですよ。
武瑠:なら、よかった。
ON:マジでよかったよ。だって「イエローメッセンジャー」って、変な曲だしさ。今までにない曲で武瑠も大変やったと思うんですけど、すごくいいフレーズでした。
武瑠:腐ってもギタリストやから(笑)。
――「イエローメッセンジャー」の作詞は、南出さんが担当していますよね。
南出:歌詞を書いたのは僕なんですが、ONにも案をもらいながら書き進めていきました。作詞中に、ずっと言っていたのは「曲がけっこうポップだから、キャッチーな単語が何個かあれば楽曲が成立する」ということ。だからこそ、文で読み返したときに伝えたいことを伝えられるようにというのは意識しました。
――伝えたいこととは、どのようなことでしょうか。
南出:「Transcend even God」「存在の照明」「旅立ち日記」の3曲って、背中を押すようなメッセージが多かったと思うんです。納得のいかない現状を抱えながらも、いろんなものを乗り越えて前に進んでいる人に刺さる楽曲というか。でも、実際に音楽を聴いている人のなかには、そつなく人生を過ごしている人もいると思ったんですよね。「それなりに辛いこともあるけど、それなりに嬉しいこともあって生きてます」みたいな。そういう人でも、きっと一度は理想の未来や人生を思い描いたことがあったと思うんですよ。ただ、ちょっとした挫折やトラブルがあって、夢を追うことができなくなってしまっただけで。いろんな人が生きていて、いろんな出会いがあって、いずれも素晴らしい。「それぞれが素晴らしい人生を生きている」と伝えられたらなって。出来上がってみると、わりと壮大な歌詞になりました。
――こだわったポイントは、どこでしょうか。
南出:日本語には、こだわりましたね。ONから曲を受け取った時点で、すでに「イエローメッセンジャー」というタイトルがついていて。“イエロー”や“メッセンジャー”から、みんなで輝く指針に向かっていくイメージが湧いてきたんです。そこから「輝いて見えるものってなんだろう」と考えて、太陽に辿りついて。日本は“日出国(ひいずるくに)”という昔ながらの呼びかたがありますし、日本で生まれ育ったニュアンスを曲全体に入れようと思い、今の歌詞になりました。
――12月には自主企画も控えているそうですね。
南出:お伝えできるようなことは、まだ何も決まってないんですけどね(笑)。『サード・ファンファーレ』を通して、自分たちの正解がちょっとずつ見えてきているので、この3ヶ月間でMaverick Momらしさを磨いていきたいと思っています。
ON:次の自主企画までに、ステージングをちゃんと確立させていきたいよね。
南出:東京と大阪で自主企画を成功することができて、わりと自信もついたので。より多くのお客さんに、自分たちの成長した姿や伝えたいメッセージ、ライブの世界観などをお届けできたらいいですね。今回は僕らからのリクエストで、おもかげが対バンしてくれることになっているんですよ。
ON:Maverick Momの自主企画を観に来てくれたのが嬉しくて、ウキウキで誘っちゃいました(笑)。やっているジャンルは僕らとは全然違うんですけど、音楽っていうのは同じなので。異文化交流みたいになったらいいですよね。
南出:来てくださったかたには、おもかげとの化学反応で生まれるいいエネルギーも感じていただけるのではないかなと思っています。
ON:僕らにとっておもかげは、横の繋がりで出来た唯一の友達といっても過言ではないので。石川と東京なので、なかなか会えないけど、これからも仲良くさせていただきたいですね。僕らが横の繋がりにする第一歩ってイメージ。
タイゾー:とはいえ、「負けないぞ」という気持ちで臨みたいと思います。同世代のバンドとして仲良くしつつも、切磋琢磨していく仲でありたいから。熱い気持ちでライブに挑めたらなって思っています。
武瑠:今からすごく楽しみです。
――では最後に、これからどんなバンドになっていきたいか教えていただけますか。
武瑠:新曲が出るときに、他のバンドよりも「どんな曲が出るんだろう」って楽しんでもらえるのがいいかなって。Maverick Momは、いろんな曲を書くバンドだし。
タイゾー:毎度毎度、ワクワクとドキドキを届けられたらなと。
ON:僕らにしかできない音楽は、確実にあると思うので。それをちゃんと提示して、もっと多くの人に届いていったら嬉しいですね。
南出:ライブに来てくれたお客さんが「どんな曲がセットリストに入っているんだろう」ってワクワクできるバンドというか。
タイゾー:ライブでは、音源と違う新鮮さを届けたいよね。
南出:音源や現場でワクワクしてくれる人の数を増やしていって、今よりも規模も存在感も器もデカいバンドになっていきたいと思います!
――チャレンジが大好きなMaverick Momですが、ちなみに今挑戦したいことってありますか。
ON:毎日が挑戦だから、改めてっていうとなぁ……。
タイゾー:個人的には、自主企画を通して課題が見つかったので、それをクリアしていきたいと思っています。
ON:具体的には?
タイゾー:グルーヴとか跳ねとか魅せかたとか。
南出:僕個人としては、もうちょっとギターが上手くなりたいですね。
ON:そうなんだ(笑)。
南出:武瑠には、バッキングの分野での「ここまでやってみろよ」を、わりと優しめに設定してもらっている部分があるので。
武瑠:優しすぎる?
南出:そうね。俺、厳しい武瑠も好きだからさ。もうちょっと応えられるようになりたいなって思うよ。
ON:バンドとしては、ポップを追求するのが挑戦したいことかな。単に難しいことをやっていても、わかる人にしか伝わらないので。伝えたいことを多くの人に広めるために、わかりやすいけど簡単ではない曲を作るのは、まだ僕らに足りない力やなって思います。
南出:伝えたいことがあるからこそ、自分たちの制作過程を見直す必要があるかもね。
ON:大史は圧倒的にそのポテンシャルを持っていると思うので。もっと大史の歌声などを活かせる曲づくりをしていきたいです。
――難しい楽曲を届けやすくするうえで、リファレンスにしているアーティストはいますか。
南出:ONと武瑠は、売れてる楽曲の分析とかして曲を作ってるんだよね?
武瑠:リファレンス……。パッと思いつくのは、あんまないですね。
ON:僕は、King Gnuかな。圧倒的に難しいことをやっていても、あれだけポップに売れるのは、本当に理想なので。とはいえ、最近ってポップスのレベルが全体的に高くなってきたと思うんですよ。2000年代や2010年代は、歌いやすいメロディーの時代だと思うんですけど、最近はKing GnuしかりYOASOBIしかり、メロディーがけっこう難しいんですよね。米津玄師とか星野源とかも難しいし。最近のアーティストに対しては「難しいことをめちゃくちゃやってるのに売れるんだ」という印象があります。
――Maverick Momに追い風の時代が来ていますね。
ON:どうだろう(笑)。
タイゾー:いい風が吹いてくれたらいいね。
南出:たぶん、ビュンビュン吹いてますよ。